膝の痛みは膝だけを見ればよいのでしょうか?
膝OAでは、膝関節そのものの評価が欠かせません。しかし、歩く、立ち上がる、階段を上るといった動作では、膝だけが単独で働いているわけではありません。
股関節、骨盤、足関節、体幹が協調して働くことで、身体を支えながら前方へ移動できます。
例えば、股関節の伸展や外転の働きが十分でない場合、歩行中の骨盤や下肢の運動に変化が生じる可能性があります。足関節の可動性が低下している場合も、歩行時の身体の移動に影響することがあります。
ただし、股関節や骨盤の動きに左右差があるからといって、それが膝OAの原因であると決めつけることはできません。実際の症状や動作との関係を評価する必要があります。
歩行では骨盤と股関節が重要な役割を担う
歩行中、骨盤は左右の下肢の動きと連動しながら移動します。
股関節周囲筋は、立脚期に身体を支え、遊脚期には脚を前方へ運ぶ働きに関係します。
そのため、膝OAの方では、膝の屈伸だけでなく、股関節の可動域、骨盤の動き、下肢の協調性を確認することが重要です。
なぜ膝から離れた部位にアプローチするのか?
モビライゼーションPNFでは、症状のある部位だけでなく、比較的動かしやすい部位を選び、対角・螺旋方向の運動を利用する考え方があります。
例えば、膝の痛みが強く、膝を大きく動かすことが難しい場合には、症状を確認しながら骨盤や股関節などの動きから介入することを検討します。
目的は、膝から離れた部位を動かすこと自体ではありません。身体全体の運動を引き出し、最終的に立ち上がりや歩行など、問題となっている動作に結びつけることです。
なお、遠隔部位への介入によって必ず膝の痛みが改善するという意味ではありません。介入前後で症状や動作を再評価し、本人にとって意味のある変化が確認できるかを判断します。
膝OAでは全身の動作を評価する
i-Potentialでは、膝関節の状態を確認したうえで、必要に応じて次の項目を評価します。
• 股関節の屈曲・伸展・外転・回旋可動域
• 骨盤の前後・側方への運動
• 足関節の背屈可動域
• 片脚支持時のバランス
• 立ち上がりや階段昇降
• 歩行時の体幹・骨盤・下肢の協調性
評価結果に基づいて、膝関節への直接的な運動と、股関節・骨盤などを利用した全身運動を組み合わせます。
まとめ
膝OAの運動機能を考えるときには、膝関節だけでなく、股関節・骨盤・足関節・体幹の協調性も重要です。
膝の痛みがあるからといって、常に膝だけに介入する必要があるとは限りません。症状と動作を評価し、必要な部位から運動を引き出すことが大切です。
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参考文献
• Uchio Y, et al. Japanese Orthopaedic Association (JOA) clinical practice guidelines on the management of Osteoarthritis of the knee. J Orthop Sci. 2025;30(2):185-257. doi:10.1016/j.jos.2024.06.013.
• Kolasinski SL, et al. Arthritis Care Res. 2020;72(2):149-162. doi:10.1002/acr.24131.
• 新井光男:モビライゼーションPNF.メジカルプレス,2009.
