体幹をひねる動作は腰だけで行われるのではない
後ろを振り向く、寝返りをする、歩行中に腕を振る。これらの動作には、胸椎、肋骨、腰椎、骨盤、股関節の回旋運動が関係します。
胸椎は胸郭と連結しており、胸郭は肋骨、胸骨、胸椎などから構成されます。胸椎の回旋運動は、肋骨や胸郭の動き、呼吸、肩甲帯の運動とも関係します。
そのため、腰痛がある方の評価では、腰椎の回旋だけでなく、胸椎・胸郭の運動も確認することが有用な場合があります。
胸椎と腰椎の回旋は同じではない
胸椎と腰椎では、椎間関節の形状や肋骨との連結など、解剖学的な特徴が異なります。そのため、回旋運動の可動性や運動特性にも違いがあります。
体幹を回旋する際には、胸椎・腰椎・骨盤がそれぞれ運動に参加します。ただし、どの部位がどの程度動くかは、姿勢、動作速度、荷重、個人の身体特性によって異なります。
腰痛患者の脊柱運動を調べたシステマティックレビュー・メタ解析では、腰椎の可動性は複数の運動面で低下し、胸椎についても前額面・水平面で可動性の低下が報告されました。一方、骨盤の可動性には有意な制限が認められませんでした。これは集団としての結果であり、すべての腰痛患者に当てはまるものではありません。
体幹回旋は、胸郭と胸椎だけでなく、腰椎と骨盤も含む複合運動です。胸椎の動きだけを大きくすればよいという意味ではありません。
胸郭の動きと呼吸
胸郭は呼吸に伴って拡張・縮小します。吸気では肋骨が挙上・外旋する方向に動き、呼気ではその逆方向の運動が生じます。
呼吸と体幹運動は完全に独立したものではありません。呼吸時の胸郭運動、腹部の圧調整、体幹筋活動は、姿勢保持や動作の安定性に関係します。
ただし、呼吸パターンの変化だけで腰痛の原因を説明することはできません。痛み、運動習慣、心理的要因、身体機能などを総合的に評価する必要があります。
腰痛の評価で確認する項目
• 胸椎の回旋・伸展
• 胸郭の左右差と呼吸時の動き
• 腰椎の回旋と側屈
• 骨盤と胸郭の相対的な回旋
• 歩行、寝返り、振り向き動作での体幹運動
評価では、左右差だけでなく、動作中の痛みや不安感、実際の生活動作への影響を確認します。
モビライゼーションPNFによる体幹運動へのアプローチ
i-Potentialでは、腰部の状態を評価したうえで、胸郭や肩甲骨、骨盤などの動きを確認します。
必要に応じて、モビライゼーションPNFの対角・螺旋方向の運動を用い、上肢・肩甲帯と体幹、骨盤が協調して動くことを促します。
施術後は、体幹回旋や振り向き動作、歩行などを再評価します。
胸郭へのアプローチは、腰痛を必ず改善させる方法ではありません。評価結果に基づいて選択し、反応を確かめながら運動療法につなげます。
まとめ
腰痛の評価では、腰椎だけでなく胸椎・胸郭の回旋運動や骨盤との協調性も確認することが大切です。体幹を一つのユニットとして捉え、実際の動作の中で運動機能を評価しましょう。
参考文献
• The effect of low back pain on spine kinematics: A systematic review and meta-analysis. 2023. PMID: 37595368.
