腰痛は腰だけの問題なのでしょうか?
前かがみになる、椅子から立ち上がる、歩く、床の物を持ち上げる。これらの動作では、腰椎だけが動いているわけではありません。腰椎、骨盤、股関節、下肢が相互に関係しながら身体を動かしています。
このように、複数の関節や身体部位が協調して動作を行うことを、運動連鎖(kinetic chain)という視点から捉えることができます。
腰痛がある場合、痛みを避けるために腰部の動きを小さくしたり、股関節を十分に使わずに動いたりすることがあります。反対に、股関節の動きに制限がある場合、前屈や立ち上がりの際に腰部の運動配分が変化する可能性があります。
ただし、股関節の硬さが腰痛の直接的な原因であるとは限りません。腰痛と股関節可動域の関連を調べたシステマティックレビューでは、関連を示す報告がある一方、エビデンスの質は非常に低いと評価されています。
腰椎・骨盤・股関節はどのように連動する?
前屈動作では、腰椎の屈曲と股関節の屈曲が組み合わさり、骨盤は大腿骨に対して前方へ回転する方向に動きます。これらの運動の割合は、動作速度、荷物の重さ、柔軟性、痛みの有無などによって変化します。
立ち上がりでは、股関節と膝関節の伸展に加え、骨盤と体幹を安定させる筋活動が必要です。歩行では、骨盤の回旋や傾斜、股関節の屈伸、体幹の回旋が組み合わさり、身体重心を前方へ移動させます。
重要なのは、特定の関節が大きく動くことだけではありません。必要な動作に応じて、各部位が適切に運動を分担できることです。
前屈や立ち上がりでは、腰椎・骨盤・股関節がそれぞれ独立して動くのではなく、相互に関連しながら運動します。
腰痛の評価で確認したいこと
理学療法士による評価では、次のような項目を組み合わせます。
• 腰椎の屈曲・伸展・側屈・回旋
• 股関節の屈曲・伸展・内旋・外旋
• 骨盤の前後傾や回旋
• 前屈、立ち上がり、歩行などの機能的動作
• 動作中の痛み、恐怖感、筋活動や運動の左右差
可動域の数値だけで判断せず、症状や日常生活動作との関係を確認することが大切です。
i-PotentialのモビライゼーションPNFによるアプローチ
i-Potentialでは、腰部の状態を確認したうえで、骨盤や股関節、体幹、四肢の動きを評価します。
必要に応じて、新井光男が提唱したモビライゼーションPNFを用い、対角・螺旋方向の運動と適切な抵抗を組み合わせ、関節運動と神経筋活動を促します。
施術後には、前屈や立ち上がりなどを再評価し、変化が認められた場合には、筋力強化や機能的運動へつなげます。特定の部位を動かせば腰痛が改善するという考え方ではなく、評価と再評価を繰り返しながら、動作全体の改善を目指します。
まとめ
腰痛を考える際には、腰椎だけでなく、骨盤と股関節を含む運動連鎖を評価することが重要です。股関節の可動域や骨盤の動きは腰部の運動と関係しますが、その関係には個人差があります。
参考文献
• Avman MAG, et al. Is there an association between hip range of motion and nonspecific low back pain? A systematic review. Musculoskelet Sci Pract. 2019;42:38-51. doi:10.1016/j.msksp.2019.03.002.
• The effect of low back pain on spine kinematics: A systematic review and meta-analysis. 2023.
