「肩を揉んでも、すぐに肩こりが戻ってしまう」
「首や肩を動かすと重だるい」
「肩甲骨の周囲が硬く、腕を動かしにくい」
このような肩こりでお悩みではありませんか?
肩こりがあると、首や肩の筋肉が硬くなっていることに注目しがちです。しかし、肩の動きには肩甲骨だけでなく、胸郭、体幹、骨盤など、身体のさまざまな部位が関係しています。
そのため、肩こりのコンディショニングでは、肩だけを施術するのではなく、身体全体の動きや神経筋機能を評価することが大切です。
銀座のKARADAコンディショニングスタジオ i-Potentialでは、理学療法士・新井光男が考案したモビライゼーションPNFを活用し、肩だけでなく骨盤や体幹などの遠隔部位から働きかけるアプローチを行っています。
今回は、肩こりに対して骨盤や体幹からアプローチする理由と、モビライゼーションPNFの特徴、関連する研究について解説します。
1.肩こりは肩の筋肉だけの問題ではありません
肩こりでは、首から肩にかけての筋肉の緊張や、肩甲骨周囲の動きにくさがみられることがあります。
しかし、肩の運動は肩関節だけで完結するものではありません。
腕を上げる、後ろに回す、物を持つといった動作では、肩関節と肩甲骨が協調して動きます。さらに、その土台となる胸郭や体幹の姿勢・運動も関係します。
例えば、次のような状態が肩周囲の負担に関係することがあります。
胸郭や体幹の回旋可動性が低下している
肩甲骨の運動が滑らかでない
肩関節の可動域が制限されている
体幹と上肢の協調性が低下している
長時間の同じ姿勢や身体活動不足によって筋活動の調整が変化している
もちろん、これらがすべての肩こりの原因になるわけではありません。
重要なのは、肩こりを肩周囲の筋肉だけの問題として捉えず、身体全体の運動機能を確認することです。
2.肩こりなのに、なぜ骨盤や体幹を施術するの?
「肩が凝っているのに、なぜ腰や骨盤を動かすの?」
これは、モビライゼーションPNFの遠隔アプローチを説明するときによくある疑問です。
例えば、肩こりが強く、肩関節や肩甲骨を十分に動かしにくい場合、肩周囲に直接強い刺激を加えることが適切でないケースがあります。
そのような場合には、比較的動かしやすい骨盤や下部体幹などを遠隔部位として選択し、そこからPNFの運動パターンを用いて働きかける方法があります。
骨盤や体幹に対して対角・螺旋方向の運動や抵抗を用いた静止性収縮を促すことで、離れた上肢や肩関節の運動反応に変化が生じる可能性があります。
この考え方の背景には、身体の一部分への運動刺激が、別の部位の神経生理学的反応や運動機能に影響するという遠隔効果の研究があります。
つまり、肩こりに対して骨盤や体幹からアプローチするのは、単に肩から離れた場所を施術しているのではありません。身体全体の神経筋機能と運動のつながりに着目しているのです。
3.モビライゼーションPNFとは?
モビライゼーションPNFは、理学療法士・新井光男が考案した徒手的アプローチです。
2009年には専門書『モビライゼーションPNF』(メジカルプレス)として出版されています。
この方法では、筋・関節のモビライゼーションと、固有受容性神経筋促通法(PNF)の運動パターンや抵抗運動を活用します。
主な目的は、次の3つです。
① 筋膜・関節のモビライゼーション
筋や関節の動きにくさを評価し、身体の状態に応じた徒手的介入を行います。
筋膜についても、組織間の滑走性や身体の動きとの関係に着目します。単に強く揉むのではなく、身体の動きやすさを考慮したアプローチを行います。
② PNFによる神経筋促通
PNFの対角・螺旋方向の運動パターンや適切な抵抗を用いて、筋収縮と協調的な運動を促します。
③ 可動性・筋力・運動機能の回復
施術によって得られた運動反応を、肩関節、肩甲骨、体幹などの動きやすさにつなげます。
最終的には、腕を上げる、後ろに回す、物を持つなど、日常生活に必要な運動機能の改善を目指します。
4.肩こりに対するモビライゼーションPNFの5つのステップ
肩こりに対する遠隔アプローチは、次のような流れで行います。
ステップ1:肩・首・体幹の状態を評価する
肩こりの部位や程度だけでなく、首の動き、肩関節の可動域、肩甲骨の動き、胸郭や体幹の回旋などを確認します。
ステップ2:比較的健常で動かしやすい遠隔部位を選択する
肩周囲に痛みや動かしにくさがある場合、骨盤や下部体幹など、比較的動かしやすい部位を選択します。
ステップ3:遠隔部位から対角・螺旋方向の運動を促す
骨盤や体幹にPNFの運動パターンを用い、適切な抵抗を加えながら運動を促します。運動方向や抵抗量は、対象者の身体機能に合わせて調整します。
ステップ4:上肢・体幹の協調的な運動反応を引き出す
これは手技そのものではなく、遠隔部位への促通によって期待される機能的な反応です。神経生理学的な遠隔効果や、身体各部の協調的な活動に着目します。
ステップ5:肩関節・肩甲骨の運動機能改善につなげる
施術後に肩関節の可動域、腕を上げる動作、結帯動作、肩甲骨の動きなどを再評価します。変化が確認できれば、必要に応じて運動練習や筋力強化へつなげます。
大切なのは、施術前後の変化を確認し、実際の肩の動きや日常生活動作にどのような影響があったかを評価することです。
5.骨盤へのアプローチが肩関節の動きに影響することを検討した研究
新井光男・白谷智子らは、骨盤や体幹への抵抗運動が、離れた部位の運動機能に及ぼす影響について研究を行ってきました。
肩関節に関連する研究として、次の報告があります。
骨盤への抵抗運動と肩関節の結帯動作
Arai M, Shiratani T. The remote after-effects of a resistive static contraction of the pelvic depressors on the improvement of active hand-behind-back range of motion in patients with symptomatic rotator cuff tears. Biomedical Research. 2012;23(3).
この研究は、症候性腱板断裂患者を対象に、骨盤下制筋群の抵抗を伴う静止性収縮が、結帯動作に必要な肩関節の自動可動域に及ぼす遠隔効果を検討したものです。
結帯動作とは、手を背中に回す動作です。日常生活では、服の着脱や背中を洗う動作などに関係します。
肩関節の動きに制限がある場合、肩だけでなく骨盤などの遠隔部位への運動刺激も検討するという考え方につながる報告です。
また、骨盤のパターンにおける静止性収縮と肩関節内旋可動域との関係についても報告されています。
道祖悟史,新井光男:骨盤のパターンにおける静止性収縮の相違が肩関節内旋可動域に及ぼす遠隔後効果.PNFリサーチ.13(1):38-43,2013.
これらの研究は、骨盤への運動刺激と肩関節の運動機能との関係を考えるうえで参考になります。ただし、肩こりそのものを対象にした研究とは区別する必要があります。肩関節可動域の変化が、すべての肩こりの改善を意味するわけではありません。
6.H反射研究から考える遠隔部位への神経生理学的な影響
遠隔部位へのアプローチを考えるうえで、H反射を用いた研究も重要です。
H反射は、脊髄運動ニューロンの興奮性などを評価するために用いられる神経生理学的指標です。
新井光男・白谷智子らは、上肢や下部体幹への抵抗運動が、離れた部位のH反射に及ぼす影響を検討しています。
代表的な研究には、次のものがあります。
Arai M, Shiratani T. A comparative study of the neurophysiological remote effects of different resistive static facilitation techniques on the flexor carpi radialis H-reflex. Current Neurobiology. 2012;3(2):98-102.
Arai M, Shiratani T. Neurophysiological study of remote rebound-effect of resistive static contraction of lower trunk on the flexor carpi radialis H-reflex. Current Neurobiology. 2012;3(1):25-29.
Shiratani T, Arai M, Kuruma H, Masumoto K. The effects of opposite-directional static contraction of the muscles of the right upper extremity on the ipsilateral right soleus H-reflex. Journal of Bodywork and Movement Therapies. 2017;21(3):528-533. doi:10.1016/j.jbmt.2016.08.004.
これらは、ある部位の抵抗運動が、離れた部位の神経生理学的反応に影響する可能性を検討した研究です。
ただし、H反射の変化は肩こりの改善や筋肉のリラクセーションそのものを直接証明するものではありません。神経生理学的な反応と、臨床的な症状や運動機能の変化を分けて考えることが大切です。
7.肩こりを繰り返さないためには、運動機能の回復も重要
肩こりのコンディショニングでは、施術によって一時的に筋肉が柔らかくなったと感じるだけでなく、その後の身体の使い方を考えることも大切です。
例えば、次のような運動を段階的に取り入れます。
肩甲骨と胸郭を協調させる運動
胸椎や体幹の回旋運動
肩関節の可動域を活用する運動
肩周囲や体幹の筋力強化
日常生活での姿勢や活動量の見直し
身体の状態に応じて、無理のない範囲から運動を始め、可動性と筋力、協調性を段階的に高めていくことが重要です。
肩こりは、長時間の同じ姿勢、身体活動不足、睡眠、ストレス、筋骨格系の問題など、さまざまな要因が関係します。そのため、施術だけに頼らず、日常生活で身体を動かす習慣も整えていきましょう。
8.銀座 i-Potentialの肩こりコンディショニング
KARADAコンディショニングスタジオ i-Potentialでは、肩こりに対して、肩や首だけでなく、肩甲骨、胸郭、体幹、骨盤などの運動機能を総合的に評価します。
理学療法士による身体機能評価をもとに、モビライゼーションPNFを活用し、必要に応じて肩から離れた骨盤や体幹などの遠隔部位にもアプローチします。
当スタジオが大切にしているのは、硬くなった部分を単に揉みほぐすことだけではなく、身体全体の動きのつながりに着目し、肩の運動機能改善を目指すことです。
「肩を揉んでもすぐに戻ってしまう」
「肩甲骨の周囲が動かしにくい」
「腕を上げたり、背中に手を回したりする動作がつらい」
このようなお悩みがある方は、肩だけでなく身体全体の動きを確認してみませんか。
銀座・KARADAコンディショニングスタジオ i-Potential
理学療法士による身体機能評価とモビライゼーションPNFを活用したコンディショニングをご提供しています。
公式サイト:https://i-potential.tokyo/
※肩こりに似た症状でも、頸椎疾患、肩関節疾患、神経障害などが関係する場合があります。しびれ、進行する筋力低下、強い痛み、胸痛などがある場合は、医療機関での評価を優先してください。
