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所長はこうみる

第3回:肩こりと慢性炎症の関係とは?長時間の座位・運動不足・マイオカインから考える

肩こりと慢性炎症は関係するのでしょうか?

肩こりは、首から肩、肩甲骨周囲に感じる重さ、張り、こわばり、不快感などを含む一般的な訴えです。医学的には、肩こりという言葉だけで一つの疾患や原因が決まるわけではありません。
頸部・肩甲帯周囲の筋機能、姿勢や作業環境、身体活動量、睡眠、心理的ストレスなど、複数の要因が関係することがあります。
慢性炎症は、全身の健康状態や代謝機能を考えるうえで重要な研究テーマですが、肩こりの直接的な原因として確立しているわけではありません。血液中のCRPやIL-6が高いから肩こりが起きている、と単純に判断することはできません。

長時間の座位と肩こり

デスクワークなどで同じ姿勢を続けると、頸部や肩甲帯の筋肉に持続的な負荷がかかる場合があります。また、身体を動かす機会が少なくなり、筋活動やエネルギー消費が低下しやすくなります。
長時間の座位と肩こりの関係は、姿勢だけで説明できるものではありません。作業時間、画面や机の配置、休憩の頻度、視覚的負荷、ストレス、睡眠、運動習慣なども関係します。
そのため、肩こりの対策では「正しい姿勢を維持し続ける」ことだけを目標にするのではなく、姿勢を変える、身体を動かす、筋肉を使う機会を確保することが大切です。

筋肉はマイオカインを分泌する

骨格筋は、身体を動かすだけでなく、収縮に伴ってさまざまな生理活性物質を分泌します。筋肉由来の生理活性物質はマイオカインと呼ばれます。
代表的なものの一つがIL-6です。IL-6は炎症性サイトカインとして知られていますが、運動中に筋肉から一過性に分泌されるIL-6は、エネルギー代謝や免疫調節などにも関わります。
重要なのは、IL-6の作用は産生される組織、時間経過、濃度、生理的環境によって異なることです。運動時の一過性のIL-6上昇を、慢性的な炎症状態と同じものとして捉えることはできません。

継続的な運動は、筋収縮を通じて代謝や炎症調節に関わる経路に影響する可能性があります。

ただし、これが肩こりを直接改善する経路として証明されているわけではありません。

継続的な運動は炎症関連指標に影響する

健康な成人2,557人を含む38研究のメタ解析では、長期的な運動トレーニングによって、IL-6、CRP、TNF-αなどの炎症関連指標が低下したことが報告されています。
この結果は、継続的な運動が全身の炎症調節に関係する可能性を示しています。ただし、健康な成人を対象とした研究であり、肩こりのある人に同じ効果が生じることや、炎症指標の低下によって肩こりが改善することを直接証明したものではありません。

運動の意義は「炎症を止めること」ではなく、筋力、持久力、代謝機能、身体活動量などを総合的に支えることにあります。

肩こりのために取り入れたい身体活動
• 長時間同じ姿勢を続けず、定期的に姿勢を変える
• 肩甲骨を動かす軽い運動を取り入れる
• 首や肩だけでなく、胸郭や体幹も動かす
• 歩行などの全身運動を継続する
• 肩甲帯や上肢の筋力・持久力を段階的に高める
短い運動休憩は身体を動かす機会を増やす方法として有用ですが、数分の休憩によって慢性炎症が確実に改善するとまではいえません。

i-Potentialで考える肩こりケア

当スタジオでは、肩こりのある部位だけでなく、肩甲骨、胸郭、胸椎、体幹の動きや筋力を評価します。

必要に応じてモビライゼーションPNFを用いて身体の運動を促し、その後、肩甲帯の筋力強化や日常生活での身体活動につなげます。

施術だけでなく、日常生活で身体を動かす機会を増やし、継続できる運動習慣をつくることを大切にしています。

まとめ

慢性炎症や身体活動不足は、肩こりを取り巻く健康状態を考えるうえで検討すべき要素ですが、肩こりを炎症だけで説明することはできません。身体の動きや筋機能を評価し、日常生活の活動量と運動習慣を整えることが大切です。
参考文献
• Long-term exercise training and inflammatory biomarkers in healthy subjects: a meta-analysis of randomized controlled trials. Front Psychol. 2023. doi:10.3389/fpsyg.2023.1253329.
• Rose GL, et al. Exercise intensity and chronic inflammation: a systematic review and meta-analysis. 2020.
• Jones LB, Jadhakhan F, Falla D. The influence of exercise on pain, disability and quality of life in office workers with chronic neck pain: A systematic review and meta-analysis. Appl Ergon. 2024;117:104216. doi:10.1016/j.apergo.2023.104216.

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