「腰が痛いのに、なぜ肩甲骨を動かすの?」
「腰を直接マッサージしなくても、腰の動きは変わるの?」
腰痛に対する整体やコンディショニングでは、痛みのある腰部だけに注目するのではなく、肩甲骨、骨盤、股関節など、身体全体の動きのつながりを評価することが重要です。
銀座のKARADAコンディショニングスタジオ i-Potentialでは、理学療法士・新井光男が考案したモビライゼーションPNFを用い、痛みのある部位だけでなく、比較的動かしやすい遠隔部位から身体の運動機能に働きかけるアプローチを行っています。
今回は、腰痛に対して肩甲骨からアプローチする理由と、モビライゼーションPNFの特徴、これまでの研究について解説します。
1.腰痛の原因は腰だけにあるとは限りません
腰痛があると、腰の筋肉が硬くなっている、腰椎や骨盤の動きが悪くなっていると考えがちです。
しかし、腰痛は単一の原因で起こるものではありません。
例えば、次のような身体機能の変化が関係することがあります。
体幹や骨盤の可動性の低下
股関節の動きの制限
肩甲骨と体幹の協調性の低下
筋活動の調整機能の変化
痛みに伴う防御的な筋緊張や動作の変化
特に、身体を回旋させる、歩く、立ち上がるといった動作では、肩甲骨、体幹、骨盤、股関節が協調して働きます。
そのため、腰部の痛みを評価するときにも、腰だけでなく身体全体の運動機能を確認する必要があります。
2.腰痛に対して肩甲骨からアプローチする理由
腰部に痛みがある場合、腰を直接動かしたり、抵抗を加えたりすることが難しいケースがあります。
このような場合、比較的痛みが少なく、動かしやすい肩甲骨などの遠隔部位を選択し、そこから運動を促す方法が考えられます。
例えば、肩甲骨にPNFの対角・螺旋方向の運動パターンを用いることで、上肢と体幹の協調的な活動を促します。
ここで重要なのは、肩甲骨の運動によって腰部の筋肉を直接ほぐすという考え方ではありません。
遠隔部位への適切な運動刺激が神経筋機能に影響し、その結果として、体幹を含む身体全体の運動反応が変化する可能性に着目することです。
このような遠隔部位への働きかけは、モビライゼーションPNFの重要な特徴の一つです。
3.モビライゼーションPNFとは?
モビライゼーションPNFは、理学療法士・新井光男が考案し、2009年に専門書として出版した徒手的アプローチです。
参考書籍:
新井光男:モビライゼーションPNF.メジカルプレス,2009.
この方法では、筋・関節の動きやすさに働きかけるモビライゼーションと、固有受容性神経筋促通法(PNF)の運動パターンや抵抗運動を活用します。
主な目的は、次の3つです。
① 筋膜・関節のモビライゼーション
身体の状態を評価し、筋や関節の動きにくさに対して適切な徒手的介入を行います。筋膜についても、組織間の滑走性や身体の動きとの関係に着目します。
② 神経筋促通
PNFの対角・螺旋方向の運動パターンや抵抗運動を用いて、筋収縮や協調的な運動を促します。
③ 可動性・筋力・運動機能の回復
施術によって得られた運動反応を、体幹、骨盤、股関節、四肢の可動性や筋力、実際の動作改善につなげます。
単に筋肉を伸ばしたり、硬い部分を揉みほぐしたりするだけではなく、身体の動きと神経筋機能を総合的に捉えることが特徴です。
4.腰痛に対するモビライゼーションPNFの5つのステップ
腰痛に対する遠隔アプローチは、次のような流れで行います。
ステップ1:痛みのある体幹部の状態を評価する
腰部の痛み、体幹の可動性、骨盤の動き、股関節の可動域、姿勢、歩行などを確認します。
ステップ2:比較的健常で動かしやすい遠隔部位を選択する
腰部に痛みがある場合、肩甲骨などの遠隔部位を選択することがあります。対象者の状態に合わせて、無理なく運動できる部位を選びます。
ステップ3:遠隔部位から対角・螺旋方向の運動を促す
肩甲骨にPNFの運動パターンを用い、適切な抵抗を加えながら運動を促します。運動方向や抵抗量は、個々の身体機能に応じて調整します。
ステップ4:体幹と四肢の協調的な運動反応を引き出す
これは施術の手順そのものではなく、遠隔部位へのモビライゼーションPNFによって期待する機能的な反応です。神経生理学的な遠隔効果や身体各部の協調的な活動に着目します。
ステップ5:問題となる部位の運動機能改善につなげる
施術後に腰部や骨盤の動き、体幹の回旋、股関節の可動性、立ち上がりや歩行などを再評価します。変化が確認できれば、必要に応じて運動練習や筋力強化へつなげます。
大切なのは、施術を行うこと自体を目的にせず、施術前後の身体機能を比較し、実際の動作にどのような変化が生じたかを確認することです。
5.遠隔部位へのアプローチは研究でも検討されています
新井光男・白谷智子らは、遠隔部位への抵抗運動が神経生理学的反応や関節可動域に及ぼす影響について研究を重ねてきました。
その代表的な研究の一つが、H反射を用いた研究です。
H反射は、末梢神経への電気刺激によって誘発される反射であり、脊髄運動ニューロンの興奮性などを評価するために用いられます。
遠隔部位への抵抗運動の前後でH反射を比較することで、運動刺激が離れた部位の神経生理学的反応に影響する可能性を検討しています。
代表的な報告には、以下があります。
Arai M, Shiratani T. A comparative study of the neurophysiological remote effects of different resistive static facilitation techniques on the flexor carpi radialis H-reflex. Current Neurobiology. 2012;3(2):98-102.
Arai M, Shiratani T. Neurophysiological study of remote rebound-effect of resistive static contraction of lower trunk on the flexor carpi radialis H-reflex. Current Neurobiology. 2012;3(1):25-29.
Shiratani T, Arai M. Remote neurophysiological rebound effects of resistive static contraction using a proprioceptive neuromuscular facilitation pattern in the mid-range pelvic motion of posterior depression on the soleus H-reflex. PNF Research. 2014;14(1):11-19.
Shiratani T, Arai M, Kuruma H, Masumoto K. The effects of opposite-directional static contraction of the muscles of the right upper extremity on the ipsilateral right soleus H-reflex. Journal of Bodywork and Movement Therapies. 2017;21(3):528-533. doi:10.1016/j.jbmt.2016.08.004.
また、fMRIを用いて、骨盤の運動や運動方向の違いと脳活動との関係を検討した研究も報告されています。
これらの研究は、遠隔部位への運動刺激が神経生理学的反応に影響する可能性を考えるうえで重要です。
ただし、H反射やfMRIで確認された変化が、そのまま腰痛の改善や慢性炎症の軽減を証明するものではありません。神経生理学的な反応と、臨床的な痛みや運動機能の改善は区別して考える必要があります。
6.腰痛だけでなく、肩や膝などの運動機能にも着目
遠隔部位へのアプローチは、腰痛だけを対象とした考え方ではありません。
例えば、骨盤への抵抗運動による肩関節の運動機能への影響や、上肢への抵抗運動による膝関節可動域への影響などが研究されています。
また、症候性腱板断裂患者の結帯動作に関する報告もあります。
Arai M, Shiratani T. The remote after-effects of a resistive static contraction of the pelvic depressors on the improvement of active hand-behind-back range of motion in patients with symptomatic rotator cuff tears. Biomedical Research. 2012;23(3).
これらは、身体の一部分への運動刺激が、別の部位の運動機能に影響する可能性を検討した研究です。
モビライゼーションPNFでは、このような身体各部の関連性に着目し、対象者の状態に合わせた介入を行います。
7.銀座 i-Potentialの腰痛コンディショニング
腰痛に対する施術では、痛みのある腰部だけを評価するのではなく、肩甲骨、体幹、骨盤、股関節などの運動機能を総合的に確認することが重要です。
KARADAコンディショニングスタジオ i-Potentialでは、理学療法士による身体機能評価をもとに、モビライゼーションPNFを活用したコンディショニングを行っています。
当スタジオが大切にしているのは、痛みのある場所だけにとらわれず、身体全体の動きのつながりを考えることです。
腰部に負担をかけずに動かせる遠隔部位を選択し、PNFの運動パターンを用いて神経筋機能に働きかけ、最終的に腰部を含む身体全体の運動機能改善を目指します。
腰痛を繰り返している方、腰を動かすことに不安がある方、身体の動きにくさが気になる方は、一度ご自身の身体全体の動きを確認してみませんか。
銀座・KARADAコンディショニングスタジオ i-Potential
理学療法士による身体機能評価とモビライゼーションPNFを活用したコンディショニングをご提供しています。
公式サイト:https://i-potential.tokyo/
※施術の適応は身体の状態によって異なります。強い痛み、進行する筋力低下、排尿・排便障害、発熱などを伴う場合は、整体やコンディショニングより先に医療機関での評価が必要です。
