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脳科学コンディショニング法

「炎症=悪」ではない ― 高齢者・慢性痛リハビリで見直す“必要な炎症”の科学 ―

「炎症を早く抑えないと治らない」
この考え方は、長年リハビリや医療の現場で常識とされてきました。
しかし近年、炎症は“完全に抑えるべき敵”ではなく、回復に不可欠なプロセスであることが、数多くの研究で明らかになっています。

特に高齢者や慢性痛、術後症例においては、炎症を抑えすぎること自体が回復を遅らせる可能性すら指摘されています。


炎症には「役割」がある

炎症とは、単なる腫れや痛みではありません。
生体にとっては以下のような回復のための生理反応です。

  • 損傷組織の清掃(マクロファージによる貪食)
  • 修復に必要な成長因子の放出
  • 血流増加による栄養・酸素供給
  • 神経・筋・結合組織の再構築の開始

この急性期炎症反応が適切に起こることで、組織は再生モードに入るのです。

問題になるのは、

  • 炎症が「過剰に・長期間」続く場合
  • あるいは「必要な初期炎症が抑え込まれてしまう」場合
    この2つです。

PEACE & LOVEが示した視点の転換

2019年、DuboisEsculierは、軟部組織損傷の新しい回復指針としてPEACE & LOVEを提唱しました。

この指針の最大の特徴は、

急性期に炎症を「尊重(Respect)」するという考え方です

PEACE(急性期)

  • Protection:無理な負荷を避ける
  • Elevation:循環補助
  • Avoid anti-inflammatories:安易な抗炎症介入を避ける
  • Compression
  • Education:痛み=損傷ではないと理解する

特に重要なのが、抗炎症薬や過度なアイシングをルーチンで行わないという点です。
これは「炎症を悪者扱いしない」という、従来とは逆の発想です。


エビデンス:炎症を抑えすぎると何が起こるか

近年の基礎・臨床研究では、

  • NSAIDsの長期使用が
    • 筋再生
    • 腱治癒
    • 骨形成

遅延させる可能性が報告されています。

また高齢者では、

  • 炎症反応そのものが弱く
  • 組織修復シグナルが不足しがち

であるため、初期炎症を抑えすぎることが慢性化の一因になると考えられています。

慢性腰痛・頸部痛の研究でも、

  • 痛みの持続は
    • 構造損傷より
    • 神経過敏性・恐怖回避・活動低下

と強く関連していることが示されています。

つまり、

「炎症=痛み=危険」という教育そのものが、慢性痛を作るのです。

LOVEフェーズ:炎症の“次”が重要

PEACEの後に続くLOVEは、回復を加速させる段階です。

  • Load:適切な負荷
  • Optimism:回復可能性への理解
  • Vascularisation:循環改善
  • Exercise:段階的運動

ここで重要なのは、
炎症が“収束し始めるタイミング”で、動かすこと

安静を続けすぎると、

  • 炎症は慢性化
  • 組織は弱化
  • 中枢感作が進行

してしまいます。

高齢者・術後症例ほど、「痛みがゼロになってから動く」ではなく

「安全な範囲で動きながら治す」という視点が不可欠です。


高齢者・慢性痛における実践的まとめ

必要な炎症とは?

それは、

  • 体が「治そう」として起こす
  • 一時的で
  • 回復へ向かう炎症

です。

抑えるべきなのは、過剰、長期化、不安・恐怖・誤った安静によって増幅された炎症

リハビリや整体・運動指導の役割は、炎症を消すことではなく、炎症が“正しく終わる環境”を整えること

PEACE & LOVEは、単なる応急処置の指針ではなく、慢性痛・高齢者医療にこそ必要な“回復の哲学”と言えるでしょう。

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