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所長はこうみる

所長はこうみる⑤ 運動プログラムが変わるとどうなるか?

前回は、脳が体をコントロールする驚きの仕組みと、痛みによって運動プログラムが変化することをお話ししました。

今回は、この運動プログラムの変化が、あなたの日常生活に具体的にどのような影響を与えるのかを詳しく見ていきましょう。

「最近、なんとなく体の調子が悪い」「疲れやすくなった」「動きがぎこちない」—もしかしたら、これらの症状の正体は、運動プログラムの変容にあるかもしれません。

まずは「あるある」体験から

「なんとなく歩きにくい」の正体

「特に痛いところはないけれど、なんとなく歩きにくい」

このような感覚を持たれたことはありませんか?具体的には説明しにくいけれど、以前とは違う感じがする。病院に行っても「特に異常はありません」と言われるけれど、確実に何かが違う。

実は、この「なんとなく」という感覚こそが、運動プログラムの変化を示している重要なサインなのです。

「疲れやすくなった」という変化

以前は平気だった距離を歩くのがつらくなった、階段を上るのが以前より大変になった、長時間立っているのがしんどくなった—これらも運動プログラムの変化による影響の可能性があります。

同じ動作をするのに、以前より多くのエネルギーが必要になっているのです。

「動作がぎこちない」という違和感

鏡に映った自分の姿を見て、「なんとなく動きがぎこちないな」と感じたことはありませんか?

または、家族や友人から「歩き方が変わった」「座り方が不自然」などと指摘されたことはないでしょうか?

これらも、運動プログラムの変化が外見にまで現れている証拠かもしれません。

運動プログラム変容の具体例

健康な人の自然で効率的な動き

まず、正常な運動プログラムがどのようなものかを見てみましょう。

例えば、うつ伏せの状態で脚を上げる動作を考えてみます。健康な人の場合:

  1. 最初に脚を上げる
  2. 脚が上がったのを感じ取る
  3. バランスを保つために、自然と体幹の筋肉に力を入れる
  4. 全体として調和の取れた、効率的な動作になる

この一連の動作は、スムーズで無駄がなく、見た目にも自然です。必要最小限の力で、最大限の効果を得られる、理想的な動作パターンです。

痛みがある人の動作パターン

一方、痛みがある人や筋力低下がある人の場合、同じ動作でも全く違うパターンになります:

  1. まず全身をガチガチに固める
  2. 体全体を緊張させた状態で脚を動かそうとする
  3. 動作中も全身の緊張が続く
  4. 動作終了後も、しばらく緊張が残る

この動作パターンでは、本来必要のない多くの筋肉が同時に働くため、非常にエネルギーの無駄が多くなります。

この違いが与える深刻な影響

一見すると、どちらも「脚を上げる」という同じ動作を行っているように見えます。しかし、使われているエネルギーの量、筋肉への負担、疲労の蓄積などは大きく異なります。

2番目のパターンが習慣化すると、以下のような問題が生じます:

  • 同じ動作をするのに、より多くのエネルギーが必要
  • 本来使うべき筋肉が使われない
  • 本来使わなくてもよい筋肉が過度に働く
  • 全体的な動作効率の低下
  • 疲労の蓄積と回復の遅延

歩行への具体的な影響

歩き方の微細な変化

運動プログラムの変化は、歩行に最も顕著に現れます。なぜなら、歩行は私たちが最も頻繁に行う動作であり、多くの筋肉や関節が連携して行われる複雑な動作だからです。

運動プログラムが変化した人の歩行には、以下のような特徴が見られることがあります:

  • 歩幅が以前より小さくなる
  • 歩く速度が遅くなる
  • 足の着地が重くなる
  • 腕の振りが小さくなる、または左右で差が出る
  • 歩行時の上下動が大きくなる

これらの変化は、一つひとつは小さなものですが、積み重なると歩行効率に大きな影響を与えます。

左右のバランス異常

特に問題となるのが、左右のバランスの異常です。

例えば、右膝に痛みがあったために右足をかばう歩き方を続けていると、痛みが治まった後も以下のような変化が残ることがあります:

  • 右足での体重支持時間が短くなる
  • 左足に過度に依存する歩き方
  • 右足の筋力低下
  • 左足への過負荷

この結果、今度は左足や左腰に問題が生じる可能性があります。

歩行効率の低下が招く疲れやすさ

正常な歩行では、前進するエネルギーの多くが、重力や慣性などの物理的な力を利用して生み出されます。つまり、比較的少ない筋力で効率よく歩くことができるのです。

しかし、運動プログラムが変化した歩行では、この効率性が失われます。同じ距離を歩くのに、より多くの筋力とエネルギーが必要になり、結果として疲れやすくなってしまうのです。

心理的な影響も見逃せない

「動くのが怖い」という恐怖

運動プログラムの変化は、身体的な影響だけでなく、心理的な影響も引き起こします。

痛みを経験した人の多くが抱くのが、「また痛くなるのではないか」という恐怖です。この恐怖は、運動プログラムの変化をさらに促進させる要因となります。

「痛くなるかもしれないから、用心して動こう」 「無理をしないで、安全な動き方をしよう」

このような心理状態が、ますます慎重で制限された動作パターンを作り出してしまうのです。

活動量の減少という悪循環

動作に対する恐怖や不安は、活動量の減少につながります。

「階段がつらいからエレベーターを使おう」 「歩くのが疲れるから車を使おう」 「重いものを持つのが怖いから誰かに頼もう」

これらの選択は、短期的には問題を回避できるかもしれません。しかし、長期的には筋力の低下、持久力の低下、動作能力の低下を招いてしまいます。

自信の喪失と社会参加への影響

「以前のようにスムーズに動けない」という実感は、自信の喪失につながることがあります。

スポーツや趣味活動から遠ざかったり、外出の頻度が減ったり、人との交流を避けるようになったりする方もいらっしゃいます。

このような変化は、身体的な健康だけでなく、精神的な健康や社会的な健康にも影響を与える可能性があります。

悪循環が止まらない理由

使わない筋肉はさらに弱くなる

運動プログラムの変化により、本来使われるべき筋肉が使われなくなると、その筋肉はどんどん弱くなっていきます。

筋肉には「使わなければ衰える」という性質があります。医学的には「廃用性萎縮」と呼ばれるこの現象により、使われない筋肉は確実に機能を低下させていきます。

すると、ますますその筋肉を使うことが困難になり、代償動作に頼らざるを得なくなります。

間違ったプログラムがさらに定着

間違った運動プログラムを繰り返し使用することで、脳はそのパターンを「正しい動き方」として学習してしまいます。

最初は「緊急避難的な動き方」だったものが、いつの間にか「標準的な動き方」になってしまうのです。

そして、一度定着したプログラムを変更するのは、それを作るときよりもはるかに困難になります。

本来の動きを思い出せない状態

長期間、間違った運動プログラムを使い続けていると、脳は正しい動き方を「忘れて」しまうことがあります。

これは、長期間使わなかった外国語を忘れてしまうのと似ています。知識としては残っていても、実際に使おうとすると思い出せない、という状態です。

この段階になると、単に「正しい動きをしましょう」と言われても、その「正しい動き」がどのようなものだったかを思い出すことができなくなってしまいます。

あなたに当てはまることはありませんか?

日常生活での変化をチェック

以下のような変化に心当たりはありませんか?

身体的な変化:

  • 同じ動作をするのに、以前より時間がかかる
  • 動作の途中で一度止まることが増えた
  • 無意識に手すりや壁に手をつくことが増えた
  • 靴下を履くときにバランスを崩しやすくなった
  • 椅子から立ち上がるときに「よっこらしょ」と声が出る

行動の変化:

  • 階段よりもエレベーターを選ぶことが増えた
  • 重いものを持つのを避けるようになった
  • 長距離を歩くことを避けるようになった
  • スポーツや運動から遠ざかった
  • 外出の頻度が減った

心理的な変化:

  • 体を動かすことに不安を感じる
  • 「年だから仕方ない」と思うことが増えた
  • 以前のようにアクティブでない自分にがっかりする
  • 家族に迷惑をかけているのではないかと心配する

小さな変化も見逃さないで

これらの変化は、多くの場合、非常にゆっくりと進行します。そのため、「年齢のせい」「運動不足のせい」と思われがちです。

しかし、実際には運動プログラムの変化が根本的な原因となっている可能性があります。

小さな変化であっても、それを見逃さずに適切に対処することで、大きな問題に発展することを防ぐことができるのです。

希望の光:脳は変われる

脳の可塑性という希望

ここまでお読みいただくと、「もう手遅れなのではないか」と不安に思われるかもしれません。

しかし、ここで重要なのは、脳には「可塑性」という素晴らしい能力があることです。

可塑性とは、環境や経験に応じて構造や機能を変化させる能力のことです。つまり、間違ったプログラムを学習してしまった脳も、適切なアプローチによって正しいプログラムを学習し直すことができるのです。

年齢は言い訳にならない

「もう年だから」と諦める必要はありません。確かに、若い頃に比べれば学習に時間がかかるかもしれませんが、何歳になっても脳は新しいことを学習する能力を持っています。

実際に、80歳、90歳になってから新しいスポーツを始めたり、楽器を習ったりして、素晴らしい成果を上げている方々がたくさんいらっしゃいます。

運動プログラムの修正も同じです。適切な方法で、継続的に取り組めば、必ず改善することができるのです。

正しいアプローチの重要性

ただし、重要なのは「正しいアプローチ」で取り組むことです。

間違った方法で一生懸命に練習しても、かえって間違ったプログラムを強化してしまう可能性があります。また、急激に変化させようとすると、体が混乱したり、新たな問題が生じたりすることもあります。

適切な専門知識に基づいた、段階的で安全なアプローチが必要なのです。

次回予告:根本改善への新しいアプローチ

今回は、運動プログラムの変化が日常生活に与える具体的な影響についてお話ししました。もしかすると、思い当たることがたくさんあったのではないでしょうか。

次回は、いよいよこれらの問題を根本的に解決するための新しいアプローチについて詳しく解説します。

新井所長が30年の臨床経験と10年の研究活動を通じて開発した「脳科学コンディショニング法」が、なぜ従来の治療法とは根本的に異なり、なぜ効果的なのかを、科学的な根拠とともにお話しします。

体の歪み、筋膜の問題、そして脳の運動プログラムの変容—これまでお話ししてきたすべての要素に同時にアプローチする、画期的な方法の秘密を明かします。

あなたの長年の悩みに、ついに終止符を打つ時が来るかもしれません。

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