肩こり・腰痛の「本当の原因」は“筋肉の感覚のズレ”
「肩がこる」「腰が重い」と感じると、多くの人は「筋肉が固いから」と思います。
しかし実際には、筋肉そのものが原因ではなく、“筋肉のセンサー”が誤作動していることが多いのです。
このセンサーこそが、固有受容器(Proprioceptors)です。
脊柱を支える筋肉――とくに脊柱起立筋(多裂筋・最長筋・腸肋筋)には、このセンサーが非常に多く存在します。
固有受容器とは何か?
筋肉や腱の状態を脳に知らせる「情報センサー」です。
| 名称 | 場所 | 働き |
| 筋紡錘 | 筋線維の中 | 「どれくらい筋が伸びたか」を感知し、反射的に収縮を起こす |
| 腱紡錘 | 筋と腱のつなぎ目 | 「どれくらい力が入っているか」を感知し、過剰な力を抑制する |
この2つのセンサーがバランスよく働くことで、
体は自然に「姿勢を保つ」「動きを調整する」「負担を分散する」ことができます。
背骨の歪みがセンサーの“入力バランス”を狂わせる
脊柱起立筋は背骨の両側にペアで存在します。
しかし、骨盤の傾き・側弯・姿勢の崩れなどが起きると、
左右の筋肉が異なる長さ・張力状態になります。
結果として──
- 引き伸ばされた側(凸側)では → 筋紡錘が過敏化(伸ばされ続けているため、常に「縮めろ」と信号を出す)
- 短縮した側(凹側)では → 筋紡錘が鈍化(伸ばされる感覚が少なく、「緩めろ」の信号が出ない)
つまり、脳に送られる“姿勢の情報”が左右でズレてしまうのです。
センサーのズレが「こり」や「痛み」を生むメカニズム
センサーがアンバランスになると、脳は「誤った姿勢地図」を形成します。
脳幹や小脳が、実際の姿勢とは異なる“真っ直ぐ”を記憶してしまうのです。
この結果、以下のような神経−筋連鎖が起こります
1️⃣ 脳が「まだ傾いている」と錯覚
2️⃣ 筋紡錘が常に“緊張命令”を出し続ける
3️⃣ 筋肉が弛緩できず、慢性的な収縮状態になる
4️⃣ 血流が低下し、酸欠・乳酸・サイトカイン(炎症物質)が蓄積
5️⃣ 結果として、「こり」「痛み」「重だるさ」として自覚
つまり、
筋肉が固いのではなく、センサーが“間違った指令”を出している。これが肩こり・腰痛の本質的な構造です。
慢性化のメカニズム:神経−筋膜ループ
固有受容器のアンバランスは、時間とともに筋膜の滑走障害(癒着)を生みます。
- 緊張し続けた筋膜は血流を妨げ、酸素不足に
- 代謝物がたまり、筋膜が粘着化
- 感覚神経の受容閾値が変化し、「張り感」「違和感」を感じやすくなる
こうして、
「筋が緊張 → 滑走障害 → 感覚の誤作動 → さらに緊張」
という悪循環ループができてしまうのです。
改善のポイントは「センサーの再教育」
マッサージで筋肉を緩めても、一時的にしか軽くならないのは、
センサー(固有受容器)が誤作動したままだからです。
改善の順序はこうなります
| 段階 | アプローチ | 目的 |
| ① | 背骨や骨盤のモビライゼーション | 左右の構造的アンバランスを修正 |
| ② | 筋膜リリース・深層筋へのアプローチ | 滑走性を回復させ、感覚入力を均等化 |
| ③ | 呼吸誘導・体幹安定運動 | 胸郭と骨盤の協調で、姿勢感覚をリセット |
| ④ | バランス・感覚トレーニング | 脳に“正しい姿勢情報”を再学習させる |
まとめ
- 肩こり・腰痛の根本には「筋肉の固さ」ではなく「センサーの誤作動」がある
- 脊柱起立筋の固有受容器が左右でアンバランスになると、姿勢情報が歪む
- その結果、筋が常に収縮し、血流が悪化して痛みを感じる
- 改善には「骨格 → 筋膜 → 感覚神経」の順で整えることが重要
所長コメント
肩こりも腰痛も、“背骨が歪んでいる”のではなく、
「背骨を真っ直ぐだと感じている感覚が歪んでいる」場合が多いのです。
脳と筋肉の感覚を整えることで、力を抜いても自然に良い姿勢が取れるようになります。
それが、本当の意味での「コリの根治」です。
当スタジオでは固有受容性神経筋促通法(PNF)を用いてアプローチしています。
日本PNF学会
https://www.pnfsj.com/
私が理事長をしている学会のHPです。
