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所長はこうみる

所長はこうみる② 体の歪みが引き起こす悪循環のしくみ

前回、あなたの長引く痛みの根本原因が「脳の間違った運動プログラム」にあることをお話ししました。

今回は、この運動プログラムに大きな影響を与える「体の歪み」について詳しく見ていきましょう。実は、わずか数ミリの歪みが、あなたの全身に想像以上の影響を与えているかもしれません。

まずは身近な例で考えてみましょう

家の土台がゆがんだらどうなる?

想像してみてください。新築の家を建てるとき、土台が少しでも傾いていたらどうなるでしょうか?

最初のうちは気づかないかもしれません。しかし、時間が経つにつれて、ドアがきちんと閉まらなくなり、窓にすき間ができ、壁にひびが入るかもしれません。そして最終的には、家全体に大きな影響が出てしまいます。

車のタイヤバランスが崩れると?

車のタイヤバランスが崩れた状態で走り続けると、どうなるでしょうか?

最初は「なんとなくハンドルが取られる」程度かもしれません。しかし、そのまま走り続けていると、タイヤが偏摩耗し、サスペンションに負担がかかり、最終的にはエンジンにまで影響が出る可能性があります。

私たちの体も、まったく同じ原理なのです。

あなたの体の「大黒柱」と「土台」

背骨は体の「大黒柱」

私たちの背骨は、家でいえば「大黒柱」のような存在です。

背骨は、頭の重さ(約5キロ)を支え、腕の重さ(両腕で約8キロ)を支え、さらに上半身全体の重さを腰や骨盤に伝える、重要な役割を担っています。

この大黒柱である背骨が少しでも傾いたり、カーブが変化したりすると、体全体のバランスが崩れてしまいます。

骨盤は体の「土台」

そして骨盤は、家でいえば「土台」です。

骨盤は、上半身の重さをすべて受け止めて、両足に分散させる重要な役割があります。また、歩くときの衝撃を吸収するクッションのような働きもしています。

実は、骨盤の中にある仙腸関節は、ほんのわずかですが動いています。その動きは数度、変位は5ミリ程度という、とても小さなものです。しかし、この小さな動きが、歩行時の衝撃を吸収する大切な「クッション」として機能しているのです。

このクッション作用が失われると、衝撃が直接背骨に伝わり、腰痛や首痛の原因となってしまいます。

歪みはどうして生まれるのか?

デスクワーク姿勢の落とし穴

現代人の多くが経験しているデスクワーク。実は、この何気ない日常の姿勢が、体の歪みの大きな原因となっています。

パソコンに向かうとき、多くの人は無意識に以下のような姿勢になりがちです:

  • 頭が前に出る
  • 肩が内側に丸まる
  • 背中が丸くなる
  • 腰が後ろに倒れる

この姿勢を1日8時間、週5日、年間で考えると、どれだけの時間を不自然な姿勢で過ごしているでしょうか?

片側ばかり使う生活習慣

私たちの日常生活には、知らず知らずのうちに体の片側ばかりを使ってしまう動作がたくさんあります:

  • いつも同じ肩にカバンをかける
  • 電話を同じ側の耳で取る
  • 立っているときに片足に重心をかける癖
  • 座るときに足を組む方向が決まっている

これらの小さな習慣が積み重なることで、体の左右のバランスが少しずつ崩れていきます。

長時間同じ姿勢の影響

人間の体は、本来「動くこと」を前提に設計されています。しかし、現代生活では長時間同じ姿勢でいることが当たり前になっています。

同じ姿勢を続けていると、使われる筋肉と使われない筋肉に大きな差が生まれます。使いすぎる筋肉は疲労し、硬くなります。一方で、使われない筋肉は弱くなり、本来の機能を果たせなくなります。

この筋肉のアンバランスが、骨格の歪みを引き起こす大きな要因となるのです。

代償運動という名の悪循環

「強い筋肉」が「弱い筋肉」の仕事を引き受ける

体に歪みが生じると、本来その仕事を担当すべき筋肉が働けなくなることがあります。そんなとき、体は非常に賢く、他の筋肉にその仕事を代わりにさせようとします。

これを「代償運動」と呼びます。

例えば、腰の筋肉が弱くなると、太ももの筋肉や背中の筋肉が腰の仕事まで引き受けようとします。一見、問題が解決したように見えますが、実はここに大きな落とし穴があります。

代償運動が生み出す新たな問題

代わりに働いてくれる筋肉は、本来の自分の仕事に加えて、他の筋肉の仕事まで引き受けることになります。当然、過労状態になり、疲れやすくなったり、硬くなったりします。

そして、その筋肉も疲れ果てると、今度は別の筋肉が代わりに働こうとします。このように、問題がどんどん他の部位に波及していくのです。

これが、「最初は腰だけが痛かったのに、いつの間にか肩もこるようになった」という現象の正体です。

弱い筋肉はますます弱くなる

さらに問題なのは、代償運動が続くと、本来働くべき筋肉がますます使われなくなることです。

筋肉は「使わなければ衰える」という性質があります。代償運動により使われなくなった筋肉は、どんどん弱くなり、最終的には「働き方を忘れてしまう」ような状態になることもあります。

こうして、悪循環はさらに深刻化していくのです。

体のセンサーが送る「間違った情報」

体には「位置を教えてくれるセンサー」がある

私たちの体には、手足の位置や関節の角度、筋肉の張り具合などを脳に教えてくれる「センサー」が無数に存在しています。これを「固有受容感覚」と呼びますが、わかりやすく「体のセンサー」と考えてください。

このセンサーのおかげで、私たちは目を閉じていても自分の手がどこにあるかわかりますし、暗い中でも歩くことができるのです。

歪みでセンサーが混乱する

ところが、体に歪みが生じると、このセンサーが正確な情報を脳に送れなくなることがあります。

例えば、実際には左右の脚の長さが違っているのに、脳がそのセンサーからの情報を「修正」して、同じ長さとして処理してしまうことがあります。

すると、実際は長さが違うのに脳は同じだと認識するため、歩行時に足が引っかかったり、つまずきやすくなったりする原因となります。

センサーの誤作動が引き起こす問題

センサーからの間違った情報に基づいて、脳は体の動かし方を決定します。そのため、センサーが正確でないと、脳も間違った判断をしてしまいます。

これが、前回お話しした「脳の間違った運動プログラム」が作られる大きな要因の一つなのです。

つまり、体の歪み → センサーの誤作動 → 脳の間違ったプログラム → さらなる歪み という悪循環が生まれてしまうのです。

あなたの体で今起こっているかもしれないこと

こんな症状に心当たりはありませんか?

  • 歩いているときに、なんとなく足が引っかかる感じがする
  • まっすぐ歩いているつもりなのに、気づくと左右どちらかに寄っている
  • 階段を上るときに、片足だけ疲れやすい
  • 靴底の減り方が左右で明らかに違う
  • 写真を撮ると、いつも肩の高さが違う

これらはすべて、体の歪みとセンサーの誤作動が関係している可能性があります。

小さな変化の積み重ね

大切なことは、これらの変化は一朝一夕に起こったものではないということです。

毎日の小さな習慣や姿勢の積み重ねが、長い時間をかけてあなたの体に変化をもたらしているのです。そして、その変化は今もゆっくりと進行している可能性があります。

希望への第一歩:理解すること

問題を知ることから解決が始まる

今回お話しした内容は、決して絶望的なものではありません。むしろ、あなたの症状の「なぜ」が明確になることで、適切な対策を立てることができるようになります。

体の歪みは、適切なアプローチによって改善することができます。そして、センサーの機能も回復させることが可能です。

次回予告:全身をつなぐ「筋膜」の秘密

次回は、体の歪みと密接に関係している「筋膜」について詳しくお話しします。

筋膜は、あなたの足の裏から頭の先まで、全身を一枚の膜でつないでいる驚きの組織です。この筋膜を理解することで、なぜ足首の問題が肩こりに影響したり、深い呼吸が腰痛に効果があったりするのかがわかります。

あなたの体に隠された、素晴らしいつながりの秘密を一緒に探っていきましょう。

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