肩こりや腰痛の原因として「筋膜の癒着」や「滑走障害」?
筋膜が滑らかに動かなくなると筋肉の動きが制限され、血流も滞り、結果的にコリや痛みを感じやすくなります。
しかし、実際の臨床現場では「ストレッチをしてもあまり改善しない」「マッサージしてもすぐ戻る」という方が少なくありません。
なぜでしょうか?
その鍵を握っているのが「間質(かんしつ)」と呼ばれる、筋肉や筋膜の間を満たす“組織のすき間”です。
■ 間質とは? 〜筋膜と筋肉の間の“環境”〜
筋肉と筋膜の間には、「間質液」と呼ばれる液体が流れています。
この液体が潤滑油のような働きをすることで、筋膜は滑らかに動き、筋肉もスムーズに伸び縮みできます。
ところが、慢性的な炎症や循環不良が続くと、この間質が「コラーゲン化」して硬くなります。
つまり、液体状だった部分が“線維性の組織”に置き換わってしまうのです。
■ 間質のコラーゲン化が起こると…
一度コラーゲン化が進行すると、筋膜と筋肉の間に“滑らない層”ができてしまいます。
この層はゴムのように伸びるわけではなく、構造的に固い。
そのため、どれだけストレッチしても「伸びてほしい層」が動かず、表面的な筋肉だけが引っ張られてしまいます。
結果として、
- ストレッチ直後は少し楽だが、すぐ戻る
- 奥のコリ感が取れない
- 動きが滑らかにならない
といった現象が起こります。
■ ストレッチよりも大切なのは「間質の環境を整えること」
間質のコラーゲン化を解くには、単に筋肉を伸ばすだけでは不十分です。
必要なのは、間質液の流れを回復させること。
すなわち、「滑走環境を再構築する」アプローチが求められます。
具体的には、
- 軽度の持続圧で組織液を動かす手技
- 呼吸や体幹の動きで深部の滑走層を刺激する
- 炎症のコントロール(冷え・血流・自律神経)
などが有効です。
■ まとめ
肩こりや腰痛の根本改善には、
「筋膜の滑走不全=癒着」だけでなく、
「その滑走を妨げている間質の変性(コラーゲン化)」まで視野に入れる必要があります。
ストレッチで改善しないケースは、筋肉が悪いのではなく、“その周りの環境”が固まっている。
この視点を持つことで、より深いレベルでの回復が可能になります。
