こんにちは、所長の新井です。
今回は、筋肉を包み支える「間質(かんしつ)」と「筋膜(きんまく)」の関係、そしてよく耳にする「筋膜の癒着」についてお話しします。
筋膜リリースという言葉は聞いたことがある方も多いと思いますが、
その裏では“間質”という目に見えない部分が大きく関わっています。
間質とは?筋肉を支える“見えない環境”
「間質」とは、臓器や筋肉の細胞と細胞の間を満たす結合組織のこと。
組織を形づくり、栄養を運び、情報を伝える“生命の通り道”です。
筋肉の中では、間質が筋線維(筋肉の本体)を包み支える構造を作っています。
筋線維(実質)
↓ 囲む
筋内膜(間質)
↓ 束ねる
筋周膜(間質)
↓ 全体を包む
筋外膜(間質)
つまり、筋肉全体は「筋線維」を「間質(結合組織)」が取り囲み、その中を血管・神経・リンパが走る構造になっています。
この“間”の環境こそが、筋肉の健康や柔軟性を左右します。
筋膜と間質の関係 〜滑走層をつくる「流れる膜」〜
筋膜(Fascia)は、筋肉を包み・仕切り・つなげる膜状の結合組織です。
実はこの筋膜も、間質と連続して存在しています
筋膜の間には間質液(Interstitial fluid)が流れており、
この液体が層と層の間を滑らかに動かすことで、筋肉がスムーズに動けるようになっています。
- 筋内膜・筋周膜・筋外膜 → 筋膜深層に連続
- 筋膜と筋膜の間を「間質液」が潤滑
- この滑走層が硬くなると「癒着(ゆちゃく)」が起こる
つまり、筋膜の癒着=間質の流れの滞りとも言えるのです。
筋膜癒着とは? 〜滑走が失われる現象〜
本来、筋膜の層はお互いに滑るように動く構造をしています。
しかし、炎症や長時間の同じ姿勢、過度のストレス、加齢などが重なると——
- 間質液が減る
- コラーゲンが過剰沈着
- 結合組織が硬く絡む
といった変化が起こり、筋膜同士がくっついた状態(癒着)になります。
これがいわゆる「筋膜の癒着」です。
筋膜癒着による主な症状
- 筋肉を伸ばすとピリッと痛い
- 動かすと“突っ張る”感じがする
- コリが取れてもすぐ戻る
- 一部だけ皮膚が動かない感覚
これらは、筋膜の滑走がうまくいかず、筋肉全体が一枚の硬い膜で包まれたような状態になっているために起こります。
炎症と線維化が癒着を悪化させる
筋肉が傷ついたり、過度に使われたりすると、炎症反応が起こります。
このとき放出される「炎症性サイトカイン(TNF-α, IL-1β, IL-6など)」が長引くと、
線維芽細胞が過剰に働き、コラーゲンが沈着して“線維化”が進行します。
線維化した組織は柔軟性を失い、筋膜癒着の温床になります。
これが、慢性的なコリ・張り・動きの制限を引き起こすメカニズムです。
老化と間質・筋膜の変化
若いころの筋肉では、間質内の幹細胞(MSC)が活発に働き、
筋肉の修復・再生を助けています。
しかし、加齢や慢性炎症が進むと、これらの細胞が脂肪細胞や線維組織に変化し、
筋膜・間質の柔軟性が低下していきます。
結果として——
- 筋肉の動きが鈍くなる
- 弾力が失われる
- 筋膜の滑りが悪くなる
という“老化筋”の状態へとつながります。
当スタジオのアプローチ:癒着をほどき、間質を“流す”
筋膜や間質の癒着を改善するには、
単に「強く押す」「ストレッチする」だけでは逆効果になることがあります。
圧迫や強いスチレッチにより出血して炎症を増強させる
重要なのは、層と層の滑りを回復させることです。
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層を感じながら“滑走”を取り戻す施術
浅層から深層へ順に層ごとの動きを解放していきます。
表層の筋膜リリース → 深層の筋膜滑走改善 → 間質液の流れ回復
という流れで、癒着を自然に解いていきます。
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循環と代謝の再活性化
癒着をほどくことで、血流・リンパ・間質液が再び動き出します。
これにより、酸素や栄養が届きやすくなり、細胞の再生力が高まります。
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動かすことでリモデリングを促す
施術後は、軽い抵抗運動や動作で新しい滑走パターンを定着させます。
「整える → 流す → 動かす → 再生する」
このサイクルが筋膜癒着の根本改善につながります。
筋膜癒着・線維化を防ぐ4段階の考え方
| 段階 | アプローチ内容 |
| 原因除去 | 姿勢・使いすぎ・冷えなどの改善 |
| 炎症制御 | 慢性炎症を鎮め、修復環境を整える |
| 滑走回復 | 筋膜リリース・ストレッチで層を再教育 |
| 再生促進 | 適度な刺激で代謝・再生力を高める |
まとめ:筋膜と間質を“流す”ことが健康な筋肉の鍵
筋肉が硬くなる本当の原因は、間質と筋膜の癒着・線維化にあります。
そこに“流れ”が戻れば、筋肉は自然にしなやかさを取り戻します。
