〜“硬い筋肉”の正体は、膜と間質のトラブル〜
こんにちは。所長の新井です。
肩こりや腰痛といえば「筋肉が硬い」「血行が悪い」とよく言われます。
しかし実際には、筋肉そのものよりも、その周囲を包む“筋膜”や“間質”の変化が、痛みや重だるさの原因になっているケースが多いのです。
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筋線維化とは何か〜筋肉が“組織化”してしまう現象〜
筋肉は本来、柔らかい筋線維(筋細胞)の束でできています。
その間には「間質」という結合組織があり、血管・神経・間質液が流れています。
ところが、
- 長時間の姿勢不良(デスクワーク・立ちっぱなし)
- 慢性的な筋緊張
- 血流不足や炎症の繰り返し
によって、間質で線維芽細胞が過剰に働き、コラーゲンを作りすぎてしまいます。
その結果、筋線維の間が硬い結合組織で埋め尽くされる状態になります。
これが「筋の線維化」。
いわば、筋肉の“すき間”がコンクリートで埋まったような状態です。
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筋膜の癒着とは〜滑るはずの膜が、滑らなくなる〜
筋膜は、筋肉を包み、層構造で身体全体を連結する「動く膜」です。
通常、筋膜の層同士の間には間質液があり、滑走することでスムーズな動きを可能にしています。
しかし、線維化によってこの間質液の流れが滞ると、
- ヒアルロン酸が粘性を増す
- 水分が減り、膜同士が“張り付く”
- 炎症後にコラーゲン沈着が進む
こうして起こるのが「筋膜癒着」。
動かすたびに膜が引っ張られ、可動域が狭くなり、
“動きの制限”と“痛み信号”の発生源になります。
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線維化+癒着が痛みを生む3つのメカニズム
① 機械的ストレスの集中
筋膜が癒着すると、本来なら全体に分散される張力が一点に集中します。
その部分が常に「引っ張られる」「ねじられる」状態となり、
筋膜内の侵害受容器(痛みセンサー)が過敏に反応します。
② 血流・間質液の停滞
筋膜の滑走不全は、微小循環の停滞を引き起こします。
酸素不足(局所虚血)により乳酸などの代謝物が蓄積し、
神経終末を刺激して「ジーンと重だるい痛み」や「こり感」を生じます。
これが典型的な肩こり・腰の重だるさの正体です。
③ 神経感作と痛みの慢性化
慢性の炎症や圧迫が続くと、神経線維が“感作”され、
ごく軽い刺激でも「痛い」と感じるようになります。
さらに、筋膜ネットワークを通じて、離れた部位にも痛みが広がります。
たとえば、腰の筋膜の癒着が背中や太ももに痛みを飛ばすこともあるのです。
肩こり・腰痛が治りにくい理由
〜「筋肉」だけをほぐしても改善しない〜
多くの人がマッサージやストレッチをしても一時的な軽さしか得られないのは、
問題の本質が「筋膜と間質」にあるからです。
筋膜の癒着や線維化は、構造的な“滑走障害”です。
単に筋肉を押すだけでは、膜の層の動きは戻りません。
また、循環が悪いままだと、再び炎症・沈着が起こり、元に戻ってしまいます。
改善の鍵は「滑走」と「「循環」
筋膜や間質を再び滑らせるためには、
- 筋膜リリース・整体による物理的滑走の再獲得
- 血流・リンパ・間質液の流動化
- 深い呼吸や動作トレーニングによる姿勢再教育や筋力トレーニング
この3つの要素が必要です。
特に、呼吸と姿勢の改善は、
歪みをとる鍵になり、歪みの改善により筋膜全体の張力バランスを整え、慢性痛を根本から変えていきます。
まとめ:線維化=痛みの温床、癒着=動きの制限
| 症状 | 背景の組織変化 | 主な原因 |
| 肩こり | 僧帽筋・肩甲挙筋の筋膜癒着 | 姿勢不良・ストレス・呼吸浅化 |
| 腰痛 | 腰背筋群の線維化・浅筋膜癒着 | 座位姿勢・血流不足・運動低下 |
つまり、
「痛み」は、筋肉ではなく“膜と間質”のSOS信号。
筋膜の癒着を解放し、間質の流れを整えることで、
筋線維は再び滑らかに動き、肩も腰も軽くなっていきます。
