「もう何か月も通っているのに良くならない」
「その場では楽になるのに、すぐ戻ってしまう」
「検査では異常なし。でも確かに痛い」
こうした声は、実はとても多く聞かれます。
そして最近の脳科学研究から、その“理由”がはっきりしてきました。
ポイントは「体」ではなく「脳の使い方」
長引く痛みの多くは、
ケガや炎症そのものではなく
脳が作ってしまった“間違った動き方”
が原因になっていることが分かってきています。
これを専門的には
「運動プログラムの変化(書き換え)」
と呼びます。
脳は「痛み」から体を守ろうとする
私たちの脳はとても賢く、痛みを感じるとすぐにこう判断します。
「ここは危ない。動かさない方がいい」
その結果、
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痛い場所の筋肉は働きにくくなり
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代わりに、別の筋肉ががんばりすぎる
という “かばう動き” が始まります。
これは本来、一時的な防御反応としては正しい反応です。
でも、痛みが長く続くと問題が起きる
この「かばう動き」が何週間・何か月も続くと、
脳はそれを “正しい動き”として記憶 してしまいます。
すると、
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痛みが軽くなっても
-
組織が治っていても
脳だけが昔の防御パターンを続けてしまう
これが
「もう治っているはずなのに、痛みだけ残る」
正体です。
この考え方は、痛み研究で世界的に知られる
Paul Hodges
Lorimer Moseley
らの研究でも示されています。
例:腰痛の人の「動きの逆転」
たとえば、うつ伏せで脚を上げる動作。
健康な人
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脚が自然に上がる
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あとから体幹が支える
慢性腰痛の人
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まず全身をガチガチに固める
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それから脚を動かす
これは、
「動かす前に守る」
という脳の過剰防御が作った動きです。
この動き方では、
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すぐ疲れる
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コリやすい
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痛みが広がる
という悪循環に入ってしまいます。
もう一つの問題:体のセンサーが鈍くなる
私たちの体には、
「今どこがどう動いているか」を脳に伝える
感覚センサー(固有受容器)があります
。
ところが、痛みが長引くと、
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このセンサーの精度が落ち
-
脳が体の状態を正確に把握できなくなる
ことが分かっています。
その結果、脳はこう判断します。
「よく分からないから、とりあえず全部固めよう」
これが
✔ 無意識の力み
✔ 体の重さ
✔ 動きにくさ
につながります。
歩き方まで変わってしまう理由
歩行は、実はとても高度な「脳の仕事」です。
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バランス
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リズム
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左右の連携
これらを脳が自動で調整しています。
しかし痛みがあると、
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歩くことに意識が必要になり
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本来の自動制御が崩れ
結果として、
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歩くと疲れる
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歩くと痛む
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だんだん動くのが怖くなる
という流れが生まれます。
「治らない」のではなく「脳が学習しすぎている」
ここで大切なのは、
あなたの体が弱いわけではない
年齢のせいでもない
脳が一生懸命、守り続けているだけ
という事実です。
だから必要なのは「ほぐす」より「再学習」
慢性痛に本当に必要なのは、
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強く揉むこと
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無理に伸ばすこと
ではありません。
必要なのは、
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痛くない範囲で
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小さく
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安全な動きを脳に伝え
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「もう守らなくていいよ」と教えること
つまり、
脳の運動プログラムを書き直すことです。
まとめ:希望はここにあります
長引く痛みは、
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壊れているから治らない
のではなく -
脳が守り方を間違えたまま
なだけのことが多いのです。
正しい刺激と動きで脳が理解すれば、
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体は驚くほど素直に変わります
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何年も続いた不調が軽くなることも珍しくありません
あなたの体は、
まだ「治る力」を失っていません。
必要なのは、
体ではなく、脳に“安心”を教えてあげることなのです。
