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【新常識】健康寿命を延ばす鍵は「歩く速さ」ではなかった!JAMA掲載の最新研究が解き明かす、本当に重要な“歩数の黄金律

 

どうせ歩くなら、だらだら歩くより早歩きでないと意味がない?

ウォーキングにまつわる、こうした“常識”を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。健康意識の高い方ほど、スマートウォッチで歩数を管理し、息が弾むくらいのペースで歩くことを心掛けているかもしれません。

しかし、その努力、もしかしたら少しだけ方向性がズレているかもしれません。

もし、「歩く“速さ”よりも、もっと根本的に重要な要素がある」としたら?
もし、「速く歩けないから」とウォーキングを諦めていた人にも、大きな希望の光が見えるとしたら?

今回ご紹介するのは、世界で最も権威のある医学雑誌の一つである『JAMA (The Journal of the American Medical Association)』に掲載された、私たちのウォーキングに関する常識を根底から見直す、画期的な研究報告です。

約5000人の男女を10年間にわたって追跡したこの大規模な研究が導き出した結論は、非常にシンプルでありながら、多くの人にとっての福音となるものでした。あなたの健康への投資を最大化する、科学的根拠に基づいた「究極のウォーキング術」を、これから徹底的に解説していきます。

その「常識」、本当に正しい?科学のメスが入ったウォーキングの謎

この研究がメスを入れたのは、ウォーキングにおける永遠のテーマともいえる2つの問いでした。

  1. 「歩数」は多いほど良いのか? 「1日1万歩」という数字は有名だが、何歩から効果が現れ、何歩で最大化するのか?

  2. 「歩行強度(歩く速さ)」は重要か? ゆっくりした歩行と、早歩きでは、健康への影響にどれだけの差があるのか?

これらの疑問に答えるため、研究チームは非常に信頼性の高い方法を採用しました。
40歳以上の米国成人4,840人を対象に、個人の記憶や自己申告に頼るのではなく、「加速度計」という精密な活動量計を最大7日間にわたって装着してもらい、1日の正確な歩数と歩行強度を客観的に記録したのです。

そして、そのデータをもとに、参加者を平均10年という長期間にわたって追跡調査し、誰がどのような原因で亡くなったのかを分析しました。この厳密なデザインによって、「歩数」と「歩く速さ」が、私たちの寿命にどのような影響を与えるのかが、かつてないほど明確に浮かび上がってきたのです。

衝撃の発見①:寿命を分ける「歩数」の明確な境界線

まず、誰もが最も気になる「歩数」と死亡リスクの関係から見ていきましょう。結果は、あまりにも明確でした。

研究チームは、1日の歩数が4,000歩未満の人々を基準(参照群)として、それ以上の歩数の人々と死亡率を比較しました。ここで示される「1000人年あたりの死亡者数」という指標に注目してください。これは、1000人が1年間生活した場合に何人が亡くなるかを示しており、数値が低いほどリスクが低いことを意味します。

  • 1日4,000歩未満のグループ:1000人年あたりの死亡者数 76.7
  • 1日4,000~7,999歩のグループ:1000人年あたりの死亡者数 21.4
  • 1日8,000~11,999歩のグループ:1000人年あたりの死亡者数 6.9
  • 1日12,000歩以上のグループ:1000人年あたりの死亡者数 4.8

この数字が意味するものは、衝撃的です。

1日に4,000歩も歩かない生活を送っている人と、ほんの少し意識して歩数を増やし「1日8,000歩」を達成した人とでは、死亡リスクに天と地ほどの差が生まれるのです。具体的に言えば、1日4,000歩を基準とすると、1日8,000歩を歩く人は、全死亡リスクが有意に低いという結果でした。

これは、単に長生きできるという話だけではありません。死因の内訳を見ると、心血管疾患(脳卒中や心筋梗塞など)による死亡、そしてがんによる死亡のリスクも、歩数が増えるにつれて一貫して低下していく傾向が確認されたのです。

さらに重要なのは、この「歩けば歩くほど死亡リスクが下がる」という傾向が、年齢(若年層・高齢層)、性別(男性・女性)、人種を問わず、すべてのグループで同様に認められたことです。これは、歩数を増やすという行為が、特定の誰かだけではなく、私たち人間にとって普遍的に有効な健康法であることを強く示唆しています。

衝撃の発見②:「歩く速さ」は、死亡リスクと“無関係”だった

さて、ここからがこの研究のもう一つの核心であり、多くの方の常識を覆すであろうポイントです。それは、「歩行強度(歩く速さ)」についてです。

「どうせ歩くなら、息が弾むくらいの早歩きでなければ効果がない」
そう信じて、無理にペースを上げていた方も多いのではないでしょうか。しかし、この研究が示した結論は、驚くべきものでした。

歩く速さと、全死亡リスクとの間に、統計的に意味のある関連は見られなかったのです。

もちろん、これは「速く歩くことが無意味だ」と言っているわけではありません。早歩きやジョギングが心肺機能を高めることは事実ですし、他の健康効果も期待できます。しかし、「死亡リスクを低減させる」という最も重要な指標において、「歩く速さ」は「1日の総歩数」という圧倒的な量の前では、決定的な要因ではなかったのです。

この発見は、私たちに二つの重要なメッセージを伝えています。

一つは、「ウォーキングの成果を焦る必要はない」ということ。速く歩くことを意識するあまり、膝や腰を痛めたり、辛くなって三日坊主になったりするくらいなら、自分のペースで、心地よく、しかし着実に歩数を積み重ねる方が、はるかに賢明な戦略だということです。

そしてもう一つは、体力に自信のない方や、高齢で速く歩くことが困難な方にとっての、大きな希望です。「速く歩けないから、ウォーキングなんてやっても無駄だ」と感じる必要は全くありません。ゆっくりでも、一歩一歩、自分の足で歩くこと。その積み重ね自体に、あなたの命を守る絶大な価値があるのです。

今日から始める「究極のウォーキング術」

この画期的な研究結果を踏まえ、私たちはウォーキングという健康法とどう向き合えば良いのでしょうか。その答えは、もはや明確です。

結論:歩く速さを気にする前に、まず1日の総歩数を増やすことに全力を注ぐべきである。

では、具体的な目標はどう設定すれば良いでしょう。

  1. 最初の目標は「現状プラス2,000歩」
    いきなり「8,000歩」を目指すのが難しいと感じるなら、まずは今のあなたの平均歩数に2,000歩(約15分~20分の歩行)をプラスすることから始めましょう。それだけで、体は確実に良い方向へ変わり始めます。
  2. 最優先で目指すべき「黄金の8,000歩」
    今回の研究で、4,000歩未満のグループと比較して死亡リスクが劇的に低下したのが「8,000歩」のラインです。これは、健康への投資効果が非常に高い、コストパフォーマンス最強の目標と言えるでしょう。
  3. 「速く歩かなければ」というプレッシャーから解放されれば、歩数を増やすアイデアは無限に湧いてきます。
  • 通勤時に一駅手前で降りて、景色を楽しみながら歩く。
  • エレベーターやエスカレーターを「階段」という無料のジムに変える。
  • 昼休みにスマホを置いて、オフィスの周りを散策する。
  • 「歩数を稼ぐ」というゲーム感覚で、休日に少し遠くの公園まで歩いてみる。

大切なのは、「量(歩数)が質(速さ)を上回る」という新常識を心に留め、無理なく、楽しく、そして着実に歩数を積み重ねていくことです。今日あなたが一歩多く踏み出すその選択が、10年後のあなたの健康な未来を創る、最も確実な投資となるでしょう。

参考文献 Saint-Maurice, P. F., Troiano, R. P., Bassett, D. R., Jr, et al. (2020). Association of Daily Step Count and Step Intensity With Mortality Among US Adults. JAMA, 323(12), 1151–1160. doi:10.1001/jama.2020.1382

 

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