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健康

【危険信号】あなたの腰痛、原因は「座りすぎ」かも?科学が解き明かすデスクワーク時代の落とし穴

「なんだか腰が重い…」「慢性的な腰痛に悩まされている…」

現代社会を生きる私たちの多くが、一度は感じたことのある身体の不調、それが「腰痛」ではないでしょうか。マッサージに行ったり、湿布を貼ったり、様々な対策を試みてはいるものの、なかなか改善しない。そんな悩みを抱える方は少なくないはずです。

実は、その頑固な腰痛の背景には、私たちの生活に深く根付いた「ある習慣」が大きく関わっているかもしれません。それは「長時間の座位行動」、つまり「座りすぎ」です。

テクノロジーの進化は、私たちの働き方や生活スタイルを劇的に変化させました。デスクワークが主流となり、通勤は電車や車、家に帰ればソファでテレビやスマートフォン。気づけば1日の大半を座って過ごしている、という方も多いでしょう。

今回は、「座りすぎ」が私たちの腰にどれほど深刻な影響を与えるのか、2つの重要な科学的研究を紐解きながら、そのメカニズムと今日から始められる対策について、深く掘り下げていきたいと思います。

現場仕事でも安心できない?ブルーカラー労働者に見る「座りすぎ」のリスク

「座りすぎが問題なのは、一日中パソコンの前にいるデスクワーカーの話でしょ?」

そう思われる方もいるかもしれません。しかし、2015年に学術誌『PLoS One』に掲載された、Gupta氏らの研究は、その固定観念に警鐘を鳴らします。

この研究がユニークなのは、調査対象を「ブルーカラー労働者」、つまり建設業や製造業など、比較的身体を動かす機会が多いとされる職業の人々に絞った点です。研究チームは、彼らの1日の総座位時間(仕事中、通勤中、余暇時間を含む)を客観的なセンサーで精密に測定し、腰痛の「強度」との関連性を分析しました。

その結果は驚くべきものでした。多変量ロジスティック回帰分析という統計手法を用いたところ、1日の総座位時間が長ければ長いほど、腰痛の痛みが強くなるという明確な正の相関関係が確認されたのです。

この研究が私たちに教えてくれるのは、非常に重要な事実です。それは、「仕事中に立っているから大丈夫」という単純な話ではない、ということです。たとえ日中の業務で身体を動かしていても、通勤中の座位、休憩中の座位、そして帰宅後の余暇時間での座位が積み重なることで、腰への負担は着実に蓄積されていきます。

つまり、職業の種類に関わらず、「1日トータルでどれくらいの時間座っているか」が、腰痛のリスクを考える上で極めて重要な指標となるのです。この事実は、現代を生きるすべての人々にとって、自らの生活習慣を見直すきっかけとなるでしょう。

「1日7時間」が運命の分かれ道?50歳以上を襲う座位時間と運動不足のダブルパンチ

次に紹介するのは、ブルーカラー労働者の研究からさらに一歩踏み込み、年齢と身体活動レベルという新たな視点を加えた、2018年に権威ある医学雑誌『Spine Journal』で発表されたPark氏らの研究です。

この研究は、韓国の国民的な大規模健康調査データを利用し、50歳以上の男女を対象に、座位時間と慢性腰痛(3ヶ月以上にわたり30日以上続く腰痛)の関連性を徹底的に検証しました。特に注目すべきは、身体活動のレベル(活発に運動しているか、あまりしていないか)によって、座位時間と腰痛の関係がどう変化するのかを分析した点です。

この研究から得られた結論は、衝撃的とも言えるものでした。

結果1:腰痛リスクが跳ね上がる「魔の7時間」
分析の結果、1日に7時間以上座っている人々は、それ以下の人々と比べて、慢性腰痛を患うリスクが統計的に有意に高いことが明らかになりました。つまり、「1日7時間」というのが、腰の健康を左右する一つの危険なボーダーラインである可能性が示されたのです。

結果2:座れば座るほど高まるリスク
さらに深刻なのは、腰痛のリスクが座位時間に応じて増加する、いわゆる「用量反応関係」が見られたことです。これは、座っている時間が8時間、9時間と長くなればなるほど、それに比例して腰痛のリスクも着実に上昇していくことを意味します。タバコの本数が増えるほど肺がんのリスクが高まるのと同じように、座位時間もまた、私たちの身体を蝕んでいくのです。

結果3:最悪の組み合わせ「長時間の座位」×「運動不足」
そして、この研究が突き止めた最も重要な発見が、身体活動レベルとの関係性です。分析の結果、日頃から運動習慣がなく、身体活動レベルが低い人ほど、長時間の座位が腰痛に結びつく関連性がより一層強まることが判明しました。

「座りっぱなしの生活」と「運動不足」が組み合わさることで、
相乗的に腰へのダメージが増大する

運動によって得られる筋力や柔軟性が、長時間の座位による負担を軽減する緩衝材の役割を果たしているのかもしれません。逆に言えば、運動習慣がない人は、座りすぎによる悪影響をダイレクトに受けてしまう、非常に脆弱な状態にあると言えるでしょう。

今すぐ始めよう!腰痛リスクから自分を救うためのアクションプラン

これら2つの研究は、年齢や職業を問わず、現代に生きる私たちがいかに腰痛のリスクに晒されているかを明確に示しています。しかし、絶望する必要はありません。原因が分かれば、対策を立てることができます。今日からあなたの生活に少しだけ変化を加えることで、そのリスクを大幅に軽減することが可能です。

  1. 「意識的に立つ」習慣をつくる
    最もシンプルで効果的なのは、座りっぱなしの状態を中断することです。「30分に1回は必ず立ち上がる」というルールを自分に課してみましょう。電話をする時、少し考え事をする時など、立つきっかけは意外と多くあります。
  2. オフィス環境を見直す
    可能であれば、スタンディングデスクの導入を検討するのも良いでしょう。立つ・座るを繰り返すことで、身体への負担を分散させることができます。また、椅子の高さを調整し、足裏全体が床に着くようにする、クッションを使って骨盤を立てるなどの工夫も有効です。
  3. 「ながら運動」を取り入れる
    エレベーターを待つ代わりに階段を使う、一駅手前で降りて歩く、歯磨きをしながらかかとの上げ下げをするなど、日常生活の中に小さな運動を取り入れましょう。特別な運動時間を確保しなくても、身体活動量を増やすことは可能です。
  4. 積極的な運動習慣を
    Park氏らの研究が示したように、身体活動は腰痛予防の強力な武器となります。週に数回のウォーキングやジョギング、ストレッチやヨガなど、自分が楽しめる運動を見つけて継続することが、長期的な健康への投資となります。

まとめ

今回ご紹介した研究は、長時間の座位行動が科学的根拠をもって腰痛のリスクを高めることを明らかにしました。「座りすぎ」はもはや単なる不快な習慣ではなく、私たちの健康を脅かす明確なリスク因子なのです。

しかし、これは同時に、私たちの意識と行動次第で、未来は変えられるという希望でもあります。

あなたの腰は、あなたが生涯付き合っていく大切なパートナーです。この記事をきっかけに、ぜひご自身の生活習慣を見直し、「座る」こととの付き合い方を考えてみてください。その第一歩は、今、この記事を読み終えたあなたが、その椅子からスッと立ち上がることなのかもしれません。

(文献)

  1. Gupta N, Christiansen CS, Hallman DM, Korshøj M, Carneiro IG, Holtermann A. Is objectively measured sitting time associated with low back pain? A cross-sectional investigation in the NOMAD study. PLoS One. 2015 Mar 25;10(3):e0121159. doi: 10.1371/journal.pone.0121159.
  2. Park SM, Kim HJ, Jeong H, Kim H, Chang BS, Lee CK, et al. Longer sitting time and low physical activity are closely associated with chronic low back pain in population over 50 years of age: a cross-sectional study using the sixth Korea National Health and Nutrition Examination Survey. Spine J. 2018 Nov;18(11):2051-2058. doi: 10.1016/j.spinee.2018.04.003.

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